2024年からのNISAでは、売却した商品の簿価分を、翌年以降に非課税保有限度額の空きとして再利用できます。その年の年間投資枠は、売っても戻りません。「枠が戻る」と聞いたら、どちらの枠かを分けて考えるのが出発点です。
この記事は2026年10月19日時点で確認した、成人向けNISAの一般的な説明です。2024年以降のNISAで購入した商品の通常の売却を扱います。2027年からの未成年者向け制度、個別の税務判断、売買の推奨は対象外です。以下の取引と金額の組合せはすべて架空で、実際の口座を操作した記録ではありません。公式情報確認日:2026年10月19日(日本時間)。
Q1. 年間投資枠と非課税保有限度額は、何が違う?
年間投資枠は「その年の新たな買付け」、非課税保有限度額は「簿価で数えた保有額」にかかる上限です。簿価とは、ここでは購入時の金額です。いま売れる金額や、口座に表示される評価額とは分けて読みます。
- 年間投資枠:つみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円。合計は年360万円ですが、一方だけで360万円を使えるわけではありません。
- 非課税保有限度額(総枠):合計1,800万円。その内側に、成長投資枠で保有できる1,200万円の上限があります。1,800万円に1,200万円を足す仕組みではありません。
総枠は、生涯の買付額をただ足し続ける上限ではありません。売却した分を翌年以降に再利用できます。一方、年が変わるたびに総枠1,800万円が丸ごと空くわけでもありません。年間投資枠に余裕があっても、総枠や成長投資枠の保有限度額を超えて買い付けることはできません。
根拠:金融庁:年間投資枠と非課税保有限度額、金融庁:簿価残高での管理と成長投資枠の上限。確認日:2026年10月19日(日本時間)。
Q2. 売った年に、年間投資枠は使い直せる?
使い直せません。買付額を年間投資枠から数える際、売却分は差し引きません。たとえば、2025年に成長投資枠で合計180万円を購入し、そのうち購入額80万円の商品を同年に100万円で全部売ったとします。総枠には十分な余裕があり、ほかの買付けはない例です。
2025年の成長投資枠の残りは、240万円−180万円=60万円です。売った商品の購入額80万円を足して140万円にしたり、売却代金100万円を足して160万円にしたりはできません。
この売却により、総枠のうち80万円分を再利用できるのは2026年以降です。その場合も、成長投資枠の年間上限は240万円。80万円を上乗せした320万円にはなりません。総枠と成長投資枠の保有限度額にも収まる必要があります。
使い残した年間投資枠も、翌年へ繰り越せません。この例で2025年の残り60万円を使わなくても、2026年の成長投資枠は300万円にはなりません。「売却による総枠の再利用」と「未使用の年間枠の繰越」は別の話です。
根拠:日本証券業協会:2026年9月版Q&A、Q28・Q29(使い残しと同年の再利用)、金融庁:再利用額は年間投資枠に上乗せされない。確認日:2026年10月19日(日本時間)。計算は本記事によるものです。
Q3. 値上がり・値下がりすると、戻る金額も変わる?
通常の売却で再利用できるのは、売った部分の簿価です。売却代金や利益・損失の額ではありません。次は、100万円で買った商品を全部売る二つの架空例です。追加購入や元本払戻金などによる簿価の変動はなく、費用も含めません。
- 130万円で売れた場合:売却損益は130万円−100万円=プラス30万円。翌年以降に再利用できる総枠は100万円分です。
- 70万円で売れた場合:売却損益は70万円−100万円=マイナス30万円。それでも、翌年以降に再利用できる総枠は100万円分です。
後者で100万円分を再利用できても、30万円の損失が埋まるわけではありません。保有中の値下がりだけで総枠が空くわけでもありません。一部だけ売る場合は、その売却部分の取得価額を金融機関の明細で確認し、売却代金から自分で推測しないようにします。
根拠:日本証券業協会:2026年9月版Q&A、Q10・Q11(購入手数料と簿価による計算)。非課税保有額には購入手数料等を含めません。確認日:2026年10月19日(日本時間)。
Q4. 自分の口座では、何を確認すればいい?
口座の区分、年ごとの買付額、保有分の簿価を順に確認します。注文を出す前の準備として、取引履歴や金融機関のNISA利用状況画面を読むためのチェックリストです。
- どの制度の保有分か。2024年以降のNISAか、2023年までの一般NISA・つみたてNISAかを分ける。
- どちらの年間枠を使ったか。つみたて投資枠と成長投資枠それぞれの、その年の買付額・残りを読む。
- 売る部分の簿価はいくらか。現在の評価額や、入金される売却代金と区別する。
- 総枠と成長投資枠の保有額はいくらか。翌年以降の再利用分だけでなく、保有を続ける分も含めて確認する。
- 表示と取引の年分は合っているか。未成立の注文や年末の取引がある場合、画面の数字だけで再利用額・時期を決めず、対象の明細をもとに金融機関へ確認する。
旧NISAの保有分は、2024年以降の総枠1,800万円とは別管理です。旧NISAの商品を売っても、現在のNISAの総枠が増えるわけではありません。新しい制度を使うために旧NISAの商品を売る必要もありません。
根拠:金融庁:旧NISAの売却と現行の総枠、金融庁:旧NISAで保有する商品の扱い。確認日:2026年10月19日(日本時間)。チェックリストは本記事の整理です。
なお、買付けがどの年の年間投資枠を使うかは、受渡日が基準です。注文日だけで判断しないでください。日付の意味は投資信託の申込日・約定日・受渡日の違いでも整理しています。
根拠:日本証券業協会:2026年9月版Q&A、Q33(買付けの年分と受渡日)。確認日:2026年10月19日(日本時間)。
枠が空いていることだけでは、買う必要性や売るべき時期は決まりません。NISAでも元本割れのおそれがあり、売買に伴う費用や価格変動は残ります。この記事は制度の見分け方を説明する一般情報です。個別の申告や税務上の扱いは税務署・税理士等へ、口座の表示や取引日程は利用中の金融機関へ確認してください。